逆襲のモーティマー

アニメとか映画の感想置き場……になるはず

ヴォルトロン その静かなる進撃

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二年前にブログを開設してそのままほったらかしにしている間にすごい奇跡が起きていた。権利上不可能と思われていた、まさかの「ヴォルトロン」日本上陸である。12月16日には最終season8が配信される前にこの作品について振り返ってみようと思う。 

ドリームワークスの日本アニメ愛

最初にヴォルトロンの現在の版権元であるWEP社とドリームワークスがコラボして新たに日本アニメ風な新作シリーズを作ると発表された時、意外性と共にそういう方向性にいくのは必然だったよなと個人的に納得もした。ヒクドラ2での最終決戦はドリワの得意分野である大空での立体的戦闘をあえて封じてまで、バーク島の村での戦いに拘ったのは、明らかにホルスの大冒険でグルンワルド&冷凍マンモスの襲撃シーンリスペクト(ドラゴが乗る角の位置まで一致しているのでヒクドラファンはホルスを履修しておくと楽しいぜ!)だし、更に初期の傑作であるモンスターvsエイリアンでは嫁入り前のスーザンが不思議な力で巨大化してしまい、花婿に逃げられてしまうのはウルトラQ第22話「変身」リスペクトだし、日本アニメ・特撮の良い所を取り入れたい願望は昔から強かった。

 ただ本当にここまで面白い作品になるとは予想もしていなかった。単純な日本アニメリスペクトであるならばここまで”広い”フィルムにはなりえなかったと思う。このアニメが独自の味付けに仕上がった理由は何なのか?筆者はそのエッセンスは日本でも欧米由来でもなく韓国から来たと考えている。

ヴォルトロンとサテライト・国際映画社の意外な関係

ヴォルトロンの実制作を担当するStudioMIR、この韓国のアニメスタジオの出自を辿ってみると、元はアクエリオンマクロスFでお馴染みのサテライト作品の下請けを行っていたJMAnimationから2010年に独立したスタジオなのだ。

tvtropes.org更にJManimationの出自を辿ると97年に大元動画の元制作進行が独立して出来た会社。

JM ANIMATION - Wikipedia

更に更に大元動画はどんな作品に携わっていたのか調べると、なんとなんと皆が大好きな国際映画社J9シリーズアクロバンチスラングルといった有名作に辿り着くのだ!(ロボットアニメファンならEDのスタッフロールで作画監督として菊池城二・塩沢中世・大木雪享といった表記でお馴染みだと思います。)

テウォンメディア - Wikipedia

J9シリーズといえば金田伊功氏や荒木伸吾氏による完成度の高いOP・EDばかり注目され、某漫画家に「本編はアレだな!見なくてもOKだな!」と酷評されがちですが、筆者は本編のあまり良くないとされる作画回も結構好きなんです。これ設定渡されてなくて時間の無い中、もう勢いだけで即興で描いたでしょ!って感じの謎モブロボットだったり、不死蝶のライラのお尻を下手なりに頑張ってフェチズム込めて作画しようと悪戦苦闘してるアニメーターの息遣いが聞こえてくるような線だったり、打ち切りが決まったアクロバンチの最終エピソードを三本連続で受けて制作するその頑張りっぷりには感服します。

継続は力なり。

この流れの中で改めてヴォルトロンという作品を見直してみると本当に「継続は力なり」って格言の正しさを実感します。StudioMIRに至るまでの全てのアニメ会社を渡り歩いたアニメーターは恐らくいないであろう。しかし小松原一男氏やいのまたむつみ氏の流麗なキャラデザを上手く描けなかった哀しさ・無念さを晴らすかのように超絶アクションを展開するヴォルトロン本編を見ているとそれだけで涙が込み上げてくるのだ。足掛け37年、下請け仕事を淡々とこなしながら、彼らはずっと日本アニメの後ろを追いかけ続け、ようやく世界的人気を掴んだのだ。最後にヴォルトロンの演出陣の一人、スティーブ・アン氏のイラスト展にて飾られていた一枚の絵を紹介する。

 合身戦隊メカンダーロボフランダースの犬SF西遊記スタージンガー鋼鉄ジーグ後期の新サイボーグ形態の宙、超時空要塞マクロスバルキリー、太陽の使者版鉄人28号、etc……(残りのキャラはちょっと分からない……分かる方います?)

このスピリットを受け継いだヴォルトロンを日本のアニメファンは絶対に見逃してはならない。2018年12月14日、平成が終わり新たな歴史が誕生する瞬間をリアルタイムで目撃せよ!!